人は第一印象が全て?——恋愛は「最初の数秒」でどこまで決まるのか

恋愛コラム

恋愛において「じっくり相手の人となりを知っていきたい」と言う考えの方は多いと思います。

しかし中身を知ってもらうためにも、まず「もう少しこの人と話してみたい」と思ってもらわなければいけません。

恋愛の入口では、第一印象が想像以上に大きな役割を果たしています。

第一印象は「0.1秒」で形成される

第一印象研究として有名なのが、プリンストン大学のWillisとTodorovによる研究です。

研究では、知らない人の顔写真を参加者にわずか100ミリ秒=0.1秒だけ提示しました。

それでも参加者は、

「魅力的か」
「好感が持てるか」
「信頼できそうか」
「有能そうか」
「攻撃的に見えるか」

といった評価を形成しました。

さらに興味深いのは、写真を見る時間を500ミリ秒、1000ミリ秒と長くしても、評価そのものは劇的には変わらなかったことです。

つまり人間は、

「相手をじっくり見てから第一印象を作っている」のではなく、顔を見た瞬間から評価を始めている

と考えられます。

ただし、ここは誤解してはいけません。

研究が示しているのは、

0.1秒でも“判断が形成される”

ということであって、

0.1秒の判断がすべて正しい

ということではないのです。

この違いは非常に重要です。


では、第一印象は単なる思い込みなのか?

ここも面白いところです。

人間が短時間から読み取る情報は、完全なデタラメとも言い切れません。

心理学では、短時間だけ他者の行動を観察して判断することを「thin slices(薄いスライス)」という考え方で研究してきました。

AmbadyとRosenthalは、短時間の行動観察からさまざまな結果を予測した研究をメタ分析しています。

38の結果をまとめたところ、短時間の観察による予測には全体としてr = .39の関連が認められました。

しかも興味深いことに、30秒未満の短い観察と4〜5分程度の観察を比較しても、長く観察すれば必ず大幅に予測精度が上がるわけではありませんでした。

もちろん、何を判断するのかによって精度は変わります。

別の研究でも、第一印象の正確さは「判断対象」「観察時間」「どの場面を見るか」などに左右されることが示されています。

つまり、第一印象は万能ではない。でも、人間は非常に少ない情報からかなり多くの判断をしている。というのが、科学的にはより適切な表現でしょう。


そして恋愛では、第一印象の影響が特に大きい

恋愛を考えるうえで重要なのはここからです。

「最初にいいと思った人は、その後もいいと思われやすいのか?」

これを調べるのに適しているのが、スピードデーティング研究です。

実際に複数の異性と短時間会話してもらい、

「この人にまた会いたいか」
「魅力を感じたか」

などを評価してもらいます。

2022年にPNASに掲載された研究では、3つのスピードデーティング研究、合計559人、6,600回以上のデートについて分析し、その後の恋愛感情や行動まで追跡しました。

その結果、最初に形成された

「この人は魅力的だ」という評価

だけでなく、

「自分とこの人は相性が良さそう」という、その二人特有の第一印象

も、その後の恋愛的関心やメッセージ、実際にデートすることなどを予測していました。

これはかなり重要です。

恋愛における第一印象とは、単純な「顔面偏差値」の話ではありません。

相手を見た瞬間から、

「なんとなく好き」
「話しやすそう」
「自分とは合いそう」
「もっと知りたい」

という評価が作られ、その初期評価がその後の関係にも残っていく可能性があるのです。


「結局、顔がいい人が勝つ」という話ではない

ここで「だったらイケメン・美女が圧倒的に有利なのでは?」と思うかもしれません。

確かに、身体的魅力が初期の恋愛的魅力に影響すること自体は、多くの研究で確認されています。

日本人を対象にしたスピードデーティング研究でも、身体的魅力が初期評価に関連する結果が報告されています。

しかし、恋愛の第一印象を容姿だけに還元するのは間違いです。

人が短時間で受け取っている情報には、

表情、視線、声、話し方、姿勢、服装、清潔感、距離感、相手への反応、会話のテンポなど、

さまざまなものがあります。

さらにスピードデーティング研究では、「一般的に魅力的な人か」だけでは説明できない二人固有の相性の評価も、その後の関係を予測しています。

だから恋愛で考えるべきなのは、

「顔を良くするにはどうしたらいいか?」だけではありません。

むしろ、

「会った瞬間から数分間で、相手にどんな経験をしてもらうか?」

です。


第一印象を良くするなら「盛る」より「減点を減らす」

第一印象というと、

「面白いことを言わなければ」
「自分を魅力的に見せなければ」
「会話で相手を楽しませなければ」

と考えがちです。

しかし、無理に自分を演出する必要はありません。

まず意識したいのは、

  • 清潔感のある服装や髪型
  • 相手を見たときの自然な表情
  • 聞き取りやすい声量
  • 相手の話を遮らない
  • 質問攻めにしない
  • スマホばかり見ない
  • 過度に自慢しない
  • 相手の反応を見ながら会話する

といった、ごく基本的な部分です。

なぜなら第一印象とは、

「自分の魅力をプレゼンする時間」というより、「この人と一緒にいて心地よいか」を相手が高速で学習している時間

と考えた方が実態に近いからです。

「すごい人」と思わせることより、

「なんか、この人といると楽だな」
「もう少し話してみたいな」

と思ってもらう。

恋愛の入口では、その方が重要なのかもしれません。


第一印象が悪かったら、もう終わりなのか?

もちろん、そんなことはありません。

ここが「第一印象が全て」という言葉を、そのまま科学的事実として扱ってはいけない理由です。

人間は新しい情報を得れば、相手に対する評価を更新できます。

また、短時間の判断がどの程度正確なのかは、何を評価するのか、どのような情報が与えられるのかによって変わります。

つまり、

第一印象は「判決」ではありません。

ただし、恋愛では第一印象によって、

「もう一度会う」
「LINEを返す」
「もう少し話してみる」

という次の機会そのものが左右されます。

だから重要なのです。


恋愛では「中身」より先に「入口」がある

「人は第一印象が全て」

科学的には、この表現は少し言い過ぎです。

より正確に言うなら、

人は驚くほど短時間で第一印象を作り、その印象はその後の恋愛行動にも影響する。

ということになります。

中身が重要ではない、という話ではありません。

むしろ逆です。

どれだけ誠実でも、
どれだけ優しくても、
どれだけ価値観が合っていても、

その魅力を相手が知るためには、

「もう少しこの人を知りたい」と思ってもらう時間が必要です。

だから、恋愛において第一印象を整えることは、自分を偽ることではありません。

あなたの中身を知ってもらうための「入口」を整えることです。

第一印象が恋愛のすべてではない。
でも、恋愛の続きを始めるための最初の関門ではある。

これくらいが、現在の心理学研究から言える一番現実的な結論でしょう。

参考文献

Willis, J., & Todorov, A. (2006). First Impressions: Making Up Your Mind After a 100-Ms Exposure to a Face. Psychological Science, 17(7), 592–598.

Ambady, N., & Rosenthal, R. (1992). Thin Slices of Expressive Behavior as Predictors of Interpersonal Consequences: A Meta-Analysis. Psychological Bulletin, 111(2), 256–274.

Luo, S., & Zhang, G. (2009). What Leads to Romantic Attraction: Similarity, Reciprocity, Security, or Beauty? Evidence From a Speed-Dating Study. Journal of Personality.

Kerr, L. G., et al. (2022). Initial impressions of compatibility and mate value predict later dating and romantic interest. Proceedings of the National Academy of Sciences.

港・マオ – Kong Mao
港・マオ - Kong Mao

公認心理師・臨床心理士。出会いや婚活を中心に500人以上の相談に携わってきた経験と心理学の知見をもとに、マッチングアプリや結婚相談所の選び方、プロフィール文作成やデートの攻略法など、出会いから成婚までまるっと役立つ情報を発信しています。

港・マオ - Kong Maoをフォローする
恋愛コラム
であいらぼ

コメント

タイトルとURLをコピーしました