「優しいし、誠実だし、条件も悪くない。でも、なぜか好きになれない……」
恋愛ではそんな相手に出会うことがあります。
「こんないい人を好きになれないなんて、自分は理想が高いのかな」と悩む人もいるかもしれません。
しかし「いい人だと思うこと」と「恋愛対象として惹かれること」は同じではありません。
恋愛研究でも、実際に会った相手への魅力は、条件だけでは説明できないことが示されています。
この記事では、公認心理師・臨床心理士である筆者が、「いい人なのに好きになれない」理由を恋愛心理学から考えます。
結論からいえば、「いい人だから好きになるべき」と考える必要はありません。一方で、初対面で強くときめかなかっただけで、すぐに相性が悪いと決める必要もありません。
「いい人」と「好きな人」はそもそも同じではない
まず考えたいのが、「いい人」とは何を評価しているのかです。
たとえば、
「優しい」
「仕事が安定している」
「話を聞いてくれる」
「約束を守る」
「自分を大切にしてくれる」
こうした特徴を見て、「この人はいい人だな」と判断することがあります。
ところが恋愛では、それだけで「もっと会いたい」「この人だから会いたい」という感情が生まれるとは限りません。
3つのスピードデーティング研究をまとめた研究では、その人が一般的にどれくらい魅力的に評価されるかだけでなく「自分がその相手に対して特別に感じる魅力」もその後の恋愛的関心やデートなどを予測していました。
つまり、「多くの人から見て魅力的な人」と「私が惹かれる人」は完全には一致するわけではないのです。
ここを分けるだけでも、「こんないい人を好きになれない私はおかしい」という考えから少し離れられるのではないでしょうか。
条件が合っていても、実際に会うと惹かれないことがある
婚活では特に、
・年収
・年齢
・仕事
・趣味
・結婚願望
など、相手の情報を確認する機会が多くなります。
条件を見て、「まさに理想の人かも!」と思ったのに、会ってみたら何か違った。
これは不思議なことではありません。
Eastwick & Finkel(2008)は「理想の相手に求める条件」と、実際に会った相手への恋愛的関心との関係を調べています。
その結果、事前に本人が重要だと答えた条件が、実際に会った特定の相手への恋愛的関心を必ずしも強く予測するわけではありませんでした。
プロフィールを見ながら考えた相手像と、実際に会ったときのイメージにはズレが生じることがあるわけです。

恋愛感情は一つの条件で決まらない
では、何が「好き」を決めるのでしょうか。
あるスピードデーティングを調べた研究では、初期の魅力には「本人側の特徴」「相手側の特徴」そして「その二人だから生じる組み合わせ」が関係していました。
日本で行われたスピードデーティング研究でも、27人の男性と28人の女性が3分ずつ会話した結果、外見などいくつかの要因と魅力評価との関連が報告されています。
だから「優しいのに好きになれない」ではなく「優しさは魅力の一つだけれど、それだけで恋愛感情が決まるわけではない」と考えるほうが研究には近いです。
「ドキドキしない=好きになれない」とも限らない
Moreland & Beach(1992)は、大学の授業に女性を0回・5回・10回・15回参加させました。女性たちは他の学生とは会話していません。
それでも授業で目にする回数が多かった女性ほど、後に魅力などを高く評価される傾向がありました。
これは「単純接触効果」と呼ばれる現象と関係します。
さらに81本の研究から268の効果曲線を分析したメタ分析でも、繰り返し接触と好意との関係が確認されています。
ただし、その関係は単純に「会えば会うほど好きになる」という一直線ではありませんでした。
それでも、第一印象だけでは分からない魅力が、何度か会う中で見えてくる可能性はあると考える材料にはなります。
「好きじゃない」と「まだ分からない」を分けてみる
そこで私がおすすめしたいのが、この2つを区別することです。
たとえば、
「いい人だけど、次のデートは正直行きたくない」
のであれば、無理に「いつか好きになるはず」と会い続ける必要はないでしょう。
一方、
「ドキドキはしない。でも話していて楽しいし、もう一度なら会ってみたい」
なら、まだ結論を出さなくてもいいかもしれません。
つまり、
好き
↑
もう少し知りたい
↑
まだ分からない
↓
会いたくない
くらいに分けて考えてみます。
「好きにならなきゃ」と自分を説得しなくていい
特に気をつけたいのが、
「条件がいいから」
「優しくしてくれるから」
「こんな人もう現れないかもしれないから」
「周りからもいい人と言われたから」
と、自分に恋愛感情を持つよう説得し始めることです。
相手を人として高く評価することと、その人と恋愛関係になりたいことは別です。
逆に「ドキドキしないから即終了」とする必要もありません。
「好きになるべきか?」ではなく、「私はこの人ともう少し関わってみたいか?」
という問いに変えてみてください。
恋愛感情を無理に作ろうとするより、自分の現在の反応を観察しやすくなります。
こんなときは「もう一度会う」を選択肢にしてもいい

では、判断に迷ったらどうすればよいのでしょうか。
次のように考えるのもおすすめです。
- 一緒にいて強い不快感や怖さはない
- 会話をもう少ししてみたい
- 相手についてまだ知らないことが多い
- 「会いたくない」ではなく「まだ分からない」に近い
こういう状態なら、もう一度会ってみるのも選択肢です。
反対に、触れられることへの強い抵抗感がある、会うことを考えるだけで苦痛、境界線を尊重してもらえないなどの場合に、「いい人だから」という理由だけで関係を続ける必要はありません。
大切なのは「相手が客観的にいい人か」だけではなく「自分はこの人とどんな関係を築きたいのか」です。
まとめ|「いい人」と「好きな人」は同じでなくていい
「優しい」「誠実」「条件がいい」
それらは相手の大切な魅力です。
しかし、それだけで必ず恋愛感情が生まれるわけではありません。
実際の出会いを調べた研究でも、恋愛的な魅力には一般的な魅力だけでなく、「その二人の組み合わせだから感じる魅力」が関係しています。
だから「いい人なのに好きになれない」とき、自分を責める必要はありません。
ただし最初から強くときめかなかっただけなら、「好きか、嫌いか」ではなく、「もう一度会ってみたいか」で考えてみる方法もあります。
「いい人だから好きになるべき」でも、「ときめかないから即終了」でもない。
自分の気持ちと相手との関係を、少しずつ確かめていく。
恋愛は、条件表だけでは決められないからこそ、それくらいの余白があってもいいんです。

参考文献
Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008). Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? Journal of Personality and Social Psychology, 94(2), 245–264.
Luo, S., & Zhang, G. (2009). What leads to romantic attraction: Similarity, reciprocity, security, or beauty? Evidence from a speed-dating study. Journal of Personality, 77(4), 933–964.
Moreland, R. L., & Beach, S. R. (1992). Exposure effects in the classroom: The development of affinity among students.Journal of Experimental Social Psychology, 28(3), 255–276.
Montoya, R. M., Horton, R. S., Vevea, J. L., Citkowicz, M., & Lauber, E. A. (2017). A re-examination of the mere exposure effect: The influence of repeated exposure on recognition, familiarity, and liking. Psychological Bulletin, 143(5), 459–498.
Joel, S., Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2022). Initial impressions of compatibility and mate value predict later dating and romantic interest. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(45), e2206925119.



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